看板の不具合を言われた時に開く、民法の請負と売買の条
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色が違う、光り方がむらになっている、寸法が図面と違う。納めた看板について、後からこうした話が出ることがあります。民法は、引き渡した物が契約の内容に適合しない時に、注文者や買主が何を求められ、いつまでに知らせる必要があるかを決めています。
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01請負と売買、どちらの条が関わるか
民法第632条は「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」と定めています。看板の製作や取付の契約が請負になるか売買になるかは、契約の中身によります。
どちらでも、中心になるのは売買の節の条です。第559条に「この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。」とあり、性質が許さない場合を除いて、請負にも売買の条が準用されます。請負には、このほか第636条と第637条という独自の条があります。一般に契約不適合責任と呼ばれる責任を、条の見出しでは第566条・第636条・第637条が「担保責任」と呼んでいます。「契約不適合責任」という語は、条文の本文にも見出しにも出てきません。
02契約の内容に合わない時に、求められること
出発点は第562条第1項です。引き渡された目的物が「種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」は、買主は、売主に対し、「目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。」
| 求められること | 条 | 中身 |
|---|---|---|
| 履行の追完 | 第562条 | 修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡し |
| 代金(報酬)の減額 | 第563条 | 相当の期間を定めて追完の催告をし、その期間内に追完がない時などに、不適合の程度に応じて |
| 損害賠償 | 第564条 | 第415条の損害賠償の請求を妨げない(第415条第1項ただし書き=債務者の責めに帰することができない事由による時は除く) |
| 契約の解除 | 第564条 | 第541条・第542条の解除権の行使を妨げない |
追完の方法は、注文者の言うとおりとは限りません。第562条第1項ただし書きに「売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。」とあります。作り直しを求められて修補で応じる、という選び方の余地です。
不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、追完も減額も請求できません(第562条第2項・第563条第3項)。
03請負の決まり:注文者の材料・指図と、一年以内の通知
請負では、注文者の側の事情で生じた不適合が別に扱われます。第636条は、請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(引渡しを要しない場合は、仕事が終了した時に適合しないとき)について、注文者は「注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。」と定めます。ただし、「請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。」
店から支給されたロゴのデータや、指定された取付位置で問題が出た時に、関わることがある条です。当たるかどうかは、その不適合が材料の性質や指図によって生じたかによります。色の違いの原因が支給データにあるとは限らず、支給データが材料と指図のどちらに当たるかも、条文には書かれていません。
期間は第637条第1項です。「注文者がその不適合を知った時から一年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。」数え始めは引き渡しの日ではなく、注文者が不適合を知った時。第2項により、仕事の目的物を注文者に引き渡した時(引渡しを要しない場合は、仕事が終了した時)に請負人が不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この一年の制限はかかりません。
売買の側の同じ決まりは第566条で、買主が不適合を知った時から一年以内に売主に通知しないときは、同じく請求できなくなります(売主が引渡しの時に知り、又は重大な過失によって知らなかったときを除く)。第566条と第637条がこの期間の制限をかけているのは「種類又は品質」の不適合で、数量は入っていません。
04商人どうしの売買(商法の「商人間の売買」)
売買で、しかも商人どうしなら、商法の決まりが重なります。商法第526条第1項は「商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない。」、第2項は、検査で不適合を発見したときは「直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ」、追完・減額・損害賠償・解除を請求できないとしています。続けて第2項は「売買の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないことを直ちに発見することができない場合において、買主が六箇月以内にその不適合を発見したときも、同様とする。」とし、第3項で、売主が悪意であった場合には第2項を適用しないとしています。
第526条は「売買」の条で、請負に当てはまるかは条文からは決まりません。店のオーナーさんでも、商法の「商人」に当たらない場合があります。
05通知の後の期間
第637条も第566条も、通知した後の期間は決めていません。債権の消滅時効の一般の決まりは第166条第1項で、債権は「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき」と「権利を行使することができる時から十年間行使しないとき」に、時効によって消滅します。
06よくある質問
- 納めてから2年たった看板の不具合を言われました。請求の期間はもう過ぎていますか?
請負なら、民法第637条第1項の一年は、引き渡した日ではなく、注文者が不適合を知った時から数えます。知ってから一年以内に通知しないと、追完などは請求できなくなります。ただし、引き渡した時に請負人がその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この一年の制限はかかりません(第2項)。確かめるのは、注文者がいつ不適合を知ったか、いつ通知が来たか、請負か売買か、引き渡しの時にこちらが知り、又は重大な過失で知らなかったか、の4点です。売買で、しかも商人どうしなら、受け取ったら遅滞なく検査し、直ちに通知する商法第526条も関わります。
- 店から支給されたデータどおりに作った色が、違うと言われました。第636条はどういう時に関わりますか?
第636条が関わるのは、不適合が注文者の供した材料の性質や、注文者の与えた指図によって生じた時です。まず、色の違いの原因が支給されたデータにあるのか、それ以外(部材や光源など)にあるのかを確かめます。そのうえで、請負人が材料や指図の不適当を知りながら告げなかったときは、第636条本文の制限はかからず、注文者は追完などを求められます(第636条ただし書き)。
- 作り直しを求められましたが、修理で直せます。
第562条第1項ただし書きで、別の方法の追完ができるのは、買主(請負では注文者)に不相当な負担を課するものでないときです。見るべきなのは、修理という方法が、注文者に不相当な負担を課さないかです。請負には、第559条により、性質が許さない場合を除いて売買の条が準用されます。
出どころ
- e-Gov 法令検索「民法」(2026-09-25 確認)
- e-Gov 法令検索「商法」(2026-09-25 確認)
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